日本スピッツのかかりやすい病気・ケガと予防のコツ

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こんにちは、ラーテル犬舎です。

スピッツを迎えた後、迎える前にはいろんな疑問があるかと思います

その中でよく質問いただくのが、
「日本スピッツはどんな病気に気をつければいいですか?」
というご質問です。

結論から言うと、日本スピッツは比較的丈夫な犬種です。
体の形が極端に改良されていないこと、血統の多様性が保たれていることがその理由です。

短頭種のように呼吸に問題を抱えやすい犬種でもなければ、
大型犬のように股関節の病気が多い犬種でもありません。

でも「丈夫だから何もしなくていい」わけではありません。

日々犬と向き合う中で実感するのは、
「病気になってから治す」より「病気を防ぐ」「早く見つける」ことの大切さです。
治療には時間もお金もかかりますし、何より愛犬がつらい思いをします。
予防できるものは予防する。
それが私たちにできる最大の愛情だと考えています。

この記事では、日本スピッツを迎える方・迎えたばかりの方に向けて、
知っておいてほしい病気と、ご家庭でできる予防策をお伝えします。

少し長い記事ですが、愛犬との暮らしに役立つ内容ですので、
ぜひ最後までお読みください。


目次

1. ひざのお皿が外れる病気(膝蓋骨脱臼・パテラ)

小型犬で最も多い関節トラブル

「パテラ」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
正式には「膝蓋骨脱臼」といい、ひざのお皿の骨が正しい位置からずれてしまう病気です。

イギリスで行われた21万頭以上の犬を対象にした大規模調査では、
犬全体の約1.3%がこの病気と診断されています。
小型犬ではさらに発症率が高く、ポメラニアンやチワワ、ヨークシャーテリアなどが特にかかりやすいとされています。
日本スピッツを含むスピッツ系の犬種も、注意が必要なグループに入ります。

小型犬の約90%は内側へのずれ(内方脱臼)で、
大型犬に多い外側へのずれとは異なる特徴があります。

この病気は「遺伝」と「環境」の両方が関係しています。

生まれつきの骨格の問題もありますが、育つ環境によって悪化することも、進行を防ぐこともできます。

つまり、飼い主さんの取り組み次第で、
愛犬の将来が変わる可能性があるのです。

症状の段階を知っておこう

獣医さんは症状の重さを4段階で評価します。
これを知っておくと、
健康診断のときに獣医さんの説明が理解しやすくなります。

軽度(グレードI)
ほぼ症状がありません。獣医さんが触診で押すとお皿がずれますが、
手を離すとすぐに元の位置に戻ります。
日常生活では気づかないことがほとんどです。
この段階で見つかれば、環境を整えることで進行を防げる可能性が高いです。

中程度(グレードII)
ときどき足を「ケンケン」するような歩き方をします。
ひざの曲げ伸ばしで自然にお皿がずれたり戻ったりを繰り返している状態です。
散歩中に急に片足を上げて歩き、しばらくすると普通に戻る、
という様子が見られたら要注意です。

やや重度(グレードIII)
お皿が常にずれた状態です。
手で押せば元に戻せますが、すぐにまたずれてしまいます。
腰を落とした独特の歩き方になり
、後ろ足がガニ股のように見えることもあります。

重度(グレードIV)
お皿が完全にずれて、手で押しても戻りません。
歩くのが難しくなり、外科手術なしでは正常な歩行ができない状態です。

若い日本スピッツは軽度〜中程度で発見されることが多く、
この段階での対策がその後の人生を大きく左右します。

家庭でできる一番の予防:床の滑り止め

一番大事なことは、「床を滑らないようにする」ということです。

日本の家に多いフローリングは、人間には快適でも
、犬にとっては「氷の上を歩いている」ようなもの。
滑る床の上で歩いたり走ったり方向転換したりすると、
ひざに大きな負担がかかります。

滑る床では、犬は体を安定させるために足の筋肉を過剰に使います。
この余計な力が、お皿を正しい位置から引き離す方向に働いてしまうのです。

滑りやすい床で育った犬と、滑らない床で育った犬では、
関節の状態に明らかな差が出ます。

具体的な対策:

  • リビングや廊下にカーペットやラグを敷く(裏に滑り止めがついているもの)

  • ペット用のコルクマットやジョイントマットを活用する

  • 足裏の毛を2週間に1回くらいカットする

特に3つ目は見落とされがちです。
日本スピッツは足裏にも毛が生えやすく、伸びると肉球を覆ってしまいます。
肉球は天然の滑り止めなので、これが隠れてしまうと滑りやすくなります。

「気をつけて見ている」だけでは防げません。
物理的に滑らない環境を作ること。これがひざを守る最大の予防です。


2. 目が見えなくなる遺伝性の病気(進行性網膜萎縮症・PRA)

目の奥にある網膜(光を感じ取る部分)が少しずつ悪くなり、最終的に見えなくなってしまう遺伝性の病気です。

人間の「網膜色素変性症」に似た病気で、40以上の犬種で報告されています。

日本スピッツでは「prcd型」と呼ばれるタイプが確認されています。
ポメラニアンやトイプードル、ラブラドールレトリバーなど多くの犬種に共通する遺伝子の変異が原因です。

この病気は、両親から問題のある遺伝子を両方もらった場合にだけ発症します。
片方だけ持っている犬は発症しませんが、子どもに遺伝子を伝える可能性があります(これを「キャリア」といいます)。

どんな症状が出るか

最初に影響を受けるのは、暗いところで働く細胞です。
そのため、初期症状は「夜盲」といって、暗い場所で見えにくくなることから始まります。

こんな様子があれば注意してください:

  • 夕方や夜の散歩を嫌がるようになった

  • 暗い部屋で家具にぶつかる

  • 薄暗いところで動きがぎこちない

  • 階段の上り下りを怖がるようになった

多くの場合、3〜5歳ごろから症状が出始めます。
進行すると明るい場所でも見えにくくなり、最終的には完全に視力を失います。

進行は緩やかなので、犬自身は環境に適応していきます。
目が見えなくなっても、嗅覚や聴覚を頼りに普通に生活できる犬も多いです。
ただ、飼い主さんとしては、できれば発症を防ぎたいですよね。

治療法がないからこそ「予防」がすべて

残念ながら、現在この病気を治す方法はありません。
進行を遅らせる治療法も確立されていません。

だからこそブリーダーができる、そしてすべきことは、
繁殖前の遺伝子検査です。

唾液や血液からDNAを調べることで、
その犬が「クリア(問題なし)」「キャリア(保因者)」「発症リスクあり」のどれに該当するかがわかります。
クリア同士、またはクリアとキャリアの組み合わせで交配すれば、発症する子犬は生まれません。


3. 毛が抜ける病気(日本スピッツのかかりやすい病気・ケガ)

スピッツ系に多い原因不明の脱毛症

ポメラニアンや日本スピッツなど、
ふわふわのダブルコートを持つ北方系の犬に多い脱毛症です。

サモエド、キースホンド、チャウチャウ、アラスカンマラミュートなども同じグループに入ります。

「ブラックスキン(黒皮症)」「コートファンク」など、いろいろな呼び方があります。
原因がはっきりわかっていないため「X(エックス)」という名前がついています。

毛の生え変わりのサイクルが止まってしまう「毛周期停止」という状態だと考えられています。

特徴的な症状

この病気の大きな特徴は、かゆみや痛みがないことです。

皮膚に炎症が起きているわけではないので、
犬自身は全く気にしていない様子で、元気に過ごしています。

毛が抜けた部分の皮膚が黒っぽく変色することがあり、
これが「ブラックスキン」と呼ばれる理由です。

頭や足先は正常なことが多く、
胴体を中心に左右対称に毛が薄くなっていきます。
発症年齢は1〜10歳と幅広いですが、若いオス犬に多い傾向があります。

見分けるポイント:

  • かゆがっていない、掻いていないのに毛が抜ける

  • 毛が抜けても皮膚が赤くなったり荒れたりしていない

  • 左右対称に脱毛が進む

  • 頭と足先の毛は正常

大事なポイントとして、この病気は犬の健康状態(元気・食欲・運動能力)には影響しません。
見た目の問題であり、命に関わる病気ではありません。
「うちの子、毛が抜けてかわいそう」と心配される飼い主さんもいますが、犬自身は何も困っていないことがほとんどです。

治療について

避妊・去勢手術後に毛が生えてくるケースが多く報告されています
。性ホルモンが毛の成長サイクルに影響していると考えられているためです。

メラトニンというサプリメントが効果を示すこともあります。
副作用が少ないため、最初に試されることが多い方法です。

最近では、皮膚に細かい針で刺激を与える「マイクロニードリング」という方法も注目されています。

ただし、どの方法も「必ず治る」保証はありません。
一度生えても、また抜けることもあります。
副作用のある薬を見た目だけのために使うかどうかは、
獣医さんとよく相談してください。


4. 涙やけ

白い毛だから目立つ悩み

目の下が赤茶色に染まる「涙やけ」。
日本スピッツの白い毛では特に目立ちます。

涙に含まれる「ポルフィリン」という成分が空気に触れて酸化し、
変色することで起こります。
涙自体は無色透明ですが、時間が経つと赤茶色になるのです。

原因はひとつではない

涙の通り道の問題
本来、涙は目から鼻へ流れる細い管(鼻涙管)を通って排出されます。
この管が生まれつき狭かったり、炎症で詰まっていたりすると、
涙があふれ出ます。日本スピッツではこの問題を持つ子がときどきいます。

食べ物の影響
特定の食材にアレルギーや不耐性があると、涙の量が増えることがあります。
フードを変えたら涙やけが改善した、という話もよく聞きます。

目の周りの毛の刺激
目の周りの毛が目に入って刺激になり、
涙の量が増えることもあります。

目の構造の問題
目頭の形によっては、くぼみにゴミや汚れがたまりやすくなります。
これが慢性的な刺激となり、涙の量が増えます。

家庭でのケア

軽度であれば、こまめに拭き取って清潔を保つことが基本です。専用のローションやシートも売られています。

濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖して皮膚トラブルの原因になります。特に夏場は注意が必要です。

こんな場合は獣医さんへ:

  • 目やにの量が急に増えた

  • 目やにがドロッとしている、黄色や緑っぽい

  • 目が赤い状態が続く

  • 目をしきりにこする、目を開けにくそうにしている

これらの症状がある場合は、単なる涙やけではなく、感染症や他の病気の可能性があります。


5. 気管がつぶれる病気(気管虚脱)

小型犬に共通するリスク

気管(のどから肺へ空気を送る管)を支えている軟骨が弱くなり、
呼吸するときに気管がつぶれてしまう病気です。

ヨークシャーテリアやポメラニアン、チワワ、トイプードル、シーズーなどで多く報告されていますが、日本スピッツも小型犬として注意が必要です。

「ガーガー」「ガチョウが鳴くような」咳が特徴的な症状です。
興奮したとき、運動した後、暑いとき、水を飲んだ後などに悪化しやすいです。

中年期以降に症状が出ることが多いですが、
重症の場合は若いうちから症状が見られることもあります。

一度発症すると治りにくい

この病気のやっかいなところは、一度発症すると完全に治すのが難しいことです。
軟骨が弱くなってしまうと元には戻りません。
薬で咳を抑えたり、重症の場合は手術で気管を支える器具を入れたりしますが、生涯にわたる管理が必要になります。

だからこそ、発症させない予防がとても大切です。

予防のポイント①:ハーネスを使う

散歩のとき首輪にリードをつけると、
犬が引っ張るたびに気管に直接力がかかります。
この圧力の繰り返しが、軟骨を傷める原因になりえます。

日本スピッツには、胸で支えるタイプのハーネス(Y字型ハーネス)がおすすめ。
首輪は迷子札をつけるためだけにして、リードは必ずハーネスにつけてください。

「うちの子はあまり引っ張らないから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。でも、急に何かに反応して走り出したとき、首輪だと気管に大きな衝撃がかかります。ハーネスなら、その力が胸に分散されます。

予防のポイント②:体重管理

太りすぎると首まわりの脂肪が気管を外側から圧迫します。
また、体重が重いと呼吸で動かす空気の量も増え、気管への負担が大きくなります。

日本スピッツの適正体重は個体差がありますが、肋骨を触ったときに「うっすら感じられる」くらいが理想です。
触っても肋骨がわからないようなら太りすぎ、見た目でくっきり浮き出ているようなら痩せすぎです。

予防のポイント③:呼吸器への刺激を避ける

タバコの煙、強い芳香剤、ホコリなど、空気中の刺激物も気管に負担をかけます。
できるだけ清潔な空気環境を保ってあげてください。

暑さも大敵です。犬はハアハアと口で呼吸することで体温を調節しますが、これは気管に負担をかけます。
夏場は涼しい環境を確保し、散歩は早朝か夜に。


6. 血が止まりにくい体質(第VII因子欠乏症)

普段は気づかない、でも手術前には知っておきたいこと

血を固める働きをするタンパク質(第VII因子)が生まれつき少ない体質です。
日本スピッツは、アメリカの大学(UCデービス)が公表している検査対象犬種リストに含まれています。

普段の生活で問題になることはほとんどありません。
自然に出血することはまずなく、小さな傷であれば普通に血が止まります。

ただし、避妊・去勢手術や、事故でのケガなど、大きな出血を伴う場面では、血が止まりにくくなる可能性があります。

知っておくことで備えられる

この体質を持っている犬でも、事前にわかっていれば対策ができます。
手術の際に輸血の準備をしておく、止血剤を用意しておくなど、
獣医さんが適切に対応できます。

手術の予定がある場合は、事前に血液検査で凝固機能を調べておくと安心です。
特に避妊・去勢手術は多くの犬が経験するものなので、
気になる方は事前検査について獣医さんに相談してみてください。

ブリーダーとしては、繁殖前に遺伝子検査を行い、
この体質を持つ犬同士の交配を避けることが大切だと考えています。


まとめ:予防できることは予防する

長い記事をここまで読んでいただき、ありがとうございます。

最後に、日本スピッツの健康管理で大切なことをまとめます。

ひざの問題(パテラ)
床を滑らないようにする、足裏の毛をカット、年1回の健診で触診
脱毛症(アロペシアX)
かゆみのない脱毛に気づいたら獣医さんへ相談
涙やけ
こまめに拭き取る、症状がひどい・続くなら受診
気管の問題
ハーネスを使う、太らせない、暑さを避ける
血が止まりにくい体質
手術前に血液検査を受けることを検討

日本スピッツは、きちんと環境を整えてあげれば、長く元気に暮らせる犬種です。
平均寿命は12〜14歳と言われていますが、
もっと長生きする子もたくさんいます。

「滑らない床」「ハーネスの使用」「適正体重」

どれも特別なことではなく、少しの意識と工夫でできることばかりです。

病気を知り、予防すること。それが愛犬への一番の贈り物だと思っています。

この記事が、皆さんと日本スピッツとの幸せな暮らしの一助になれば幸いです。


参考にした情報

この記事は、以下の信頼できる情報源をもとに執筆しています。

大学・研究機関

  • UC Davis 獣医遺伝学研究所(カリフォルニア大学デービス校)

    • PRA-prcd検査情報:https://vgl.ucdavis.edu/test/pra-prcd

    • 第VII因子欠乏症:https://vgl.ucdavis.edu/test/factor-vii-deficiency

  • コーネル大学 獣医学部 犬の健康センター

    • 進行性網膜萎縮症:https://www.vet.cornell.edu/

動物病院・獣医学情報

  • VCA Animal Hospitals(北米最大級の動物病院ネットワーク)

    • 気管虚脱について:https://vcahospitals.com/know-your-pet/tracheal-collapse-in-dogs

  • PetMD

    • 日本スピッツの健康情報:https://www.petmd.com/dog/breeds/japanese-spitz

学術論文・データベース

  • PubMed / PMC(査読付き医学論文データベース)

    • 膝蓋骨脱臼の疫学調査(イギリス、21万頭対象)

    • 小型犬の膝蓋骨脱臼に関する研究

犬種団体

  • アメリカンケネルクラブ(AKC)

    • アロペシアXについて:https://www.akc.org/expert-advice/health/alopecia-x-in-dogs/

※個々の犬の健康状態や治療については、
必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。


ラーテル犬舎 日本スピッツ・イタリアングレーハウンド専門ブリーダー

「お客様以上、家族未満」の関係を大切に、
生涯のパートナーとなる子犬をお届けします。

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